一人旅おやじがゆく

旅することが人生の最大の喜びである旅好きが、各地で見たもの感じたことを淡々と記します。

旅で詠むと俳句が少しレベルアップ

5〜6年前から俳句を作っている。句会にも参加している。現在、月一回顔を出している句会は56歳の私が一番若い。以前参加していた句会でも私が一番若かった。50代で一番若いのだから、俳句年齢がいかに高齢化しているか容易にわかるだろう。

TBSの「プレバト」で俳人の夏井いつきさんが芸能人を厳しく俳句の指導しており、すっかり人気番組として定着したようだ。あの番組を見て、俳句に興味を持つ若者が増えて欲しいものだと思う。じゃないといつまでたっても私は下っ端なのである。

夏井さんも「怖いおばちゃんキャラ」が板についた感じだが、仕事で接する機会に恵まれたことがある私からすると、あれはもちろんテレビ用の顔。実際はもっと普通に優しく若々しい人だった。多分すごく器用で人との距離が近い人なのだろう。あのキャラを定着させるまで、意外とストレスが溜まったのではないか。

で、話がそれたが、私の俳句の腕は「三歩歩いて二歩下がる」といった感じ。大変緩い角度の右肩上がりだ。私の場合、一般的によくありがちなことだが、どうしてもネガティブな感情をしみじみと読み込もうとして「臭い」作品になってしまう。そのくせがなかなか抜けない。恐らくは種田山頭火などの作品をよく消化しきれないまま飲み込んでしまったのか、「俳句はネガティブ感情を詠むもの」と今でも思い込んでいる節がある。もちろん私の後ろ向きの性格もおおいに反映している。そんな傾向の作品を読み返すと、「やめなはれ」と自分にツッコミを入れたくなる。

正岡子規夏目漱石をはじめとする明治〜昭和の俳人の作品を読んでも、それほど暗い作品はない。そして「プレバト」に出てくる芸能人の俳句はものすごく明るい。うまいなぁと感心する。特に東国原氏の作品は挑戦的で、二回に一度くらいの割合で、「是非とも参考にせねば」と唸らせられる。

ただ自分で言うのもなんだが、旅の最中に作った私の俳句は、少しはまともな方ではないか慰めている。それも一人で旅した時の句。集中の度合いが違うのだろう。

句会には「吟行」というのがあり、参加者全員が限られた時間、名所旧跡などを歩き回り、俳句を作る。いわば私は、一人旅をしている時、延々と一人吟行をしているようなものなのだ。

恥ずかしながらそのいくつかをここに記してみたい。「これがまともか!」などとツッコミを入れないで欲しい。すでに5年以上が過ぎてしまったが、まだまだ初心者なんだから見逃して欲しい。

 

3年前の夏、佐賀県名護屋城に行った時の句。

太閤の宴(うたげ)の如き蝉時雨

 

その半年前に奈良で。

冬ざれや南都に動くものはなし

 

そのさらに半年前の夏に松山で。

夏燕白き天守を袈裟切りに

 

3番目の句は松山城に設置されていた「俳句ポスト」に投句したら、後日「3位に選ばれました」と通知と賞品が送ってきた。むちゃくちゃ嬉しかった。さらに驚いたことにこの作品、松山の市電に名前入りで貼り出されていたらしく、それを偶然目にした会社の同僚が教えてくれた。これはむちゃくちゃ恥ずかしかった。

旅に出ると、普段自分の内面に向かいがちな私の視点が、外に向くのだろう。俳句創作の効用とでも言おうか。脳みそが偏りのないいいバランスで機能するとでも言うか。

ちなみにブログを書くことも、自分を撮影するカメラの位置をぐるぐるとあちこち変えているような感じがして、気持ちいい。