一人旅おやじがゆく

旅することが人生の最大の喜びである旅好きが、各地で見たもの感じたことを淡々と記します。

北近江の美しさ

北国街道が北へと向かう北近江あたりがとても好きだ。コロナの影響で遠くに行けない今、あのあたりを思い出すだけで、少しばかり気分が盛り上がる。

日本で一番いい場所(住みやすいとか、言葉がきれいとか、いろんな意味で)はどこかと聞かれれば、私は迷わず彦根や長浜あたりをあげる。京都や名古屋などの大きな街に近く、ローカルな場所にも関わらず、雅でしっとりとした感じがする。

2年前、両親と妻と4人で伊勢神宮に参拝したが、そのついでに北近江に行き、私のたっての希望で、琵琶湖に浮かぶ竹生島を訪ねた。古代の昔から信仰の対象になり、歌に詠まれ、多くの貴人や武将らが訪ねた小島である。

長浜の船乗り場で乗船。遠くに彦根城長浜城小谷城の山々、姉川の河口、伊吹山を見ながら、40分くらいで竹生島に到着した。思っていたよりずっとこじんまりとした島だ。港の前には土産物屋などが数軒。少しだけ坂道を登ると都久夫須麻神社(竹生島神社)、そのさらに上には宝厳寺。数羽のトンビが高々と舞っていたのを覚えている。

都久夫須麻神社では、かわらけ投げが有名。琵琶湖に面した鳥居に向かって投げ、その両脚の間をくぐると願い事が叶うらしい。

多くの人々がチャレンジするものの、鳥居までかわらけが届かない。それを見て学習した私は、少しばかり上空に向かってかわらけを放り投げたところ、見事成功。知らない人たちまで喝采を送ってくれて、得意満面である。しかし特に何か願い事がかなったという記憶はない。喝采を受けたのは嬉しかったが。

宝厳寺は唐門が国宝。京都の豊国廟の唐門を移築されたという。ただこの時は修復のための工事中だったためか、写真を撮っていないのが残念。三重塔や宝物館もあり、歴史好きにはたまらない場所である。

竹生島に神社や寺院の建造物が張り付いているような格好で、どこか長崎の軍艦島を思い出させる。この「所狭し」な感じが私は好きである。ただ同行の3人はこの島にあまり興味を示さず、神社のおみくじで母親が大吉を引き、盛り上がっていた。私のかわらけ成功より盛り上がっていた。

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話はさらに数年遡る。

列車で一人、真冬の琵琶湖を一周したことがあった。

彦根城を見て城下町を歩いていると、雪雲が日本海の方から関ヶ原方面に向かってどんどん流れている。朝の天気予報では北近江はかなりの積雪になると言っていた。

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彦根駅から北へ向かうと長浜あたりから雪が増え始め、木之本を過ぎ、余呉湖に差し掛かるあたりは、確かにかなりの積雪だった。雪景色は南国の人間のロマンを掻き立てる。雪国の人には「何もわかっていない」と怒られそうだが、「無い物ねだり」なのである。許してほしい。四季の移ろいが美しいのもまた北近江の魅力と言える。

列車はやがて、福井との県境に近い近江塩津に着いた。そのまま北へ向かえばやがて敦賀だが、私は湖西線に乗り継ぐためにホームに降りる。乗換客は結構多かったが、雪と寒さでみな無口である。

 

乗り換えの国ざかい駅雪深し

 

この時に作った俳句。この駅は北近江から北陸を旅する時、割と利用することが多い。

戦国時代には浅井、朝倉、織田の軍勢が行き来し、江戸期には北陸から京都大坂へ日本海の特産品が運ばれた道筋。歴史が凝縮しているようで、たまらないのである。

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話は2年前の両親と妻との旅行に戻る。

竹生島から帰ると、小牧空港に向かうべく、レンタカーで長浜を出発。途中、岐阜県境に近い醒井に寄る。ここはなぜだかNHKの旅番組によく出る。

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水がとても美しい。静まり返った宿場町である。