一人旅おやじがゆく

旅することが人生の最大の喜びである旅好きが、各地で見たもの感じたことを淡々と記します。

霊巌洞で宮本武蔵の息遣いを感じる

剣豪の宮本武蔵が晩年、五輪書を書いた場所とされる霊巌洞を30年数年ぶりに訪ねた。

熊本市の北西にそびえる金峰山の西麓にある。

前回訪ねたのは、はっきりと記憶していないが、おそらく社会人になったばかりの頃だったのだろう。薄らネガティブな色合いの記憶になっているところを見ると、あまり満足いく精神状態の時ではなかったのだろう。やたらと記憶を感情で塗り重ねるから、我ながら困ったものである。

ただ、私がどんなにネガティブな記憶に溺れようが、右往左往した日々を過ごそうが、霊巌洞は何も変わることなく、30数年の時がすぎたようである。確か前回来た時もツクツクボウシの鳴き声に包まれていたような気がする。

いや、一つ変化があった。4年前の熊本地震霊巌洞のすぐ横に五百羅漢と呼ばれるたくさんの石仏たちがいるが、地震の影響で崩壊したり、首が無くなったりした石仏もだいぶあったようである。

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雲巌禅寺の本堂の前から歩いて数分。これが下から見上げた霊巌洞

みなさんご存知と思うが、宮本武蔵は戦国時代〜江戸時代の剣豪。概略はWikipediaから。

「江戸時代初期の剣術家兵法家芸術家二刀を用いる二天一流兵法の開祖。京都の兵法家・吉岡一門との戦いや巌流島での佐々木小次郎との決闘が有名で、後世、演劇、小説、様々な映像作品の題材になっている。特に吉川英治の小説が有名であるが史実と異なった創作が多いことに注意する必要がある。外国語にも翻訳され出版されている自著『五輪書』には十三歳から二九歳までの六十余度の勝負に無敗と記載[注釈 1]がある。国の重要文化財に指定された『鵜図』『枯木鳴鵙図』『紅梅鳩図』をはじめ『正面達磨図』『盧葉達磨図』『盧雁図屏風』『野馬図』など水墨画・鞍・木刀などの工芸品が各地の美術館に収蔵されている」

武蔵は、加藤家の改易後に熊本城主となった細川家と縁が深く、特に武道への関心が高かった初代藩主忠利に請われ、客分として晩年を熊本城下で過ごしている。それゆえ熊本には武蔵ゆかりの地がいくつかあり、島田美術館等に美術品や工芸品が所蔵されている。霊巌洞は武蔵を最も身近に感じられる場所なのである。f:id:noaema1963:20200816191941j:image

この石段を老境にある武蔵は一段一段登ったのだろう。意外と急。

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霊巌洞の中には祠と大きな岩が一つ。蝉時雨が余計に静けさを感じさせる。

ノートには訪問者の名前と住所。半分以上が県外からだった。コロナの影響で「県境を越える移動の自粛」が呼び掛ける向きもあるが、やはり4〜5月のようには行かないようである。

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静まりかえった霊巌洞の中にいると、400年の時を隔てて宮本武蔵の息遣いが感じられるようだ。「間違いなく武蔵はここにいた。ここに座っていた」。そう思わずにはいられない。同行してくれた妻は「もう出よう。何か怖い」。確かにそんな感覚に襲われる。

40代の半ば頃(すでに10年ほど前になる)、しばらく居合を習いに行ったことがあった。武士道にどっぷりとはまり込み、時代小説、歴史小説を読み漁っていた頃だ。ちなみに私の好きな歴史上の偉人は‥誰なのだろう。以前は西郷隆盛だったが。今はすぐに浮かばない。

居合の練習は意外とハードで、3年ほどで二段まで取得したが、仕事の忙しさを理由に練習から遠去ってしまい、結局やめてしまった。

その時の先生が武蔵の二天一流の継承もやっており、時折、その練習風景を見学することもあったが、私は居合の練習だけで精一杯であった。今も模擬刀や練習用の袴を大事にしまい込んでいる。

当時から思っていたが、日本刀は意外なほど重い。二本を自在に操るなど、戦国生き残りたちの膂力の強さに驚くばかりである。ちなみに時代劇用の刀は相当軽く作ってあるはずだ。

それにしてもその頃の練習で一緒だった人々は、今も居合道を極めているのだろうか。一度、練習場だった体育館をこっそり覗きに行ってみたい。

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五百羅漢。夏の強い光に照らされ、陰影の深さが際立つ。秋から冬にかけて見る方が、ずっと優しげに見えるのだろう。

 

その後、近くのカフェ「ココペリ」で昼食。古民家を改造した雑貨も取り扱っている店。もちろん妻の希望である。若い人たちだけでなく、中高齢者の客層もあり、ゆっくりできた。私はベジタブルカレーを食べた。味もボリュームも合格点をあげたい。

霊巌洞 

所在地 熊本市西区松尾町平山589(雲巌禅寺内) 駐車場あり

見学料 大人300円

電話番号 096ー329ー8854