一人旅おやじがゆく

旅することが人生の最大の喜びである旅好きが、各地で見たもの感じたことを淡々と記します。

そして夕陽に照らされた東尋坊へ

福井県の旅、後半。

いつも疑問に思うのだが、なぜ明治新政府は、越前と若狭を無理やり合わせた形で福井県にしたのだろう。さらに言えば、なぜ敦賀市は越前に含まれるのか。気比神宮が越前の一宮と知った時は驚いた。てっきり若狭と思っていた。そう勘違いするのは私だけか。

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敦賀は、県都福井市のグループからすると、大きな山塊で完全にブロックされているように見えてしまう。地元民からすると「いらぬ世話」なのだろうか。

ただ、この山塊のおかげで、戦国大名朝倉家は畿内の軍勢から守られた部分があるのかもしれない。また、山がそのまま海に落ち込み、敦賀という天然の良港ができた。なんとも興味がわく場所である。そういえば50年ほど前、この山々を抜ける北陸トンネルで列車火災があったのを思い出す。

大本山永平寺へとバスは行く

前回の続きで、朝倉の城下町一乗谷からまたバスに乗り、今度は永平寺を目指す。意外と距離は短かった。

 

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 永平寺一帯はすべて傾斜地になっている。

境内はうっそうとした木々に覆われ、その合間から寺の建物群が顔を出している。新緑がみずみずしい。修行中の若い僧侶がたくさんいる。さすがは曹洞宗大本山である。

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話はそれるが、以前テレビで福井の女性が標準語で話すシーンを見た(おそらくふだんは関西系の方言なのだろうが)。その話し方が熊本の人にそっくりなのに驚いた。初めは熊本出身の女性なのかと思った。しかし、それ以外の人たちも一緒なのだ。抑揚のない、ぶっきらぼうな標準語。

熊本はアクセントがなく、「崩壊アクセント」とか「無アクセント」と区分される。そのアクセントで標準語を話すと、北関東から南東北の人の話し方に似る。この地域もアクセントがないからだ。

一方、東京弁は関西弁並みにアクセントの上がり下がりが強い。だから熊本の人間からすると、東京弁は歌を歌うように話さなくてはならない。相当勇気がいる。恥ずかしさが先に立つ。音感が悪い熊本出身者はしばしば「え、東北出身だった?」と間違われる。東京人には分からないだろう地方出身者の言葉の苦労は、想像を絶するものがある。

ただ、最近の若者はあまり方言を話さないので、苦もなく東京弁を話す。うちの娘2人も子供の時から一切、熊本弁を話さない。別にそう教育した覚えもないが。なぜなのだろう。

話がそれ始めたが、福井市一帯も熊本市一帯と同じく無アクセント地帯だ。それを知った時、「やはり」と膝をたたいたものである。ちなみに下の図はWikipediaに掲載されていたアクセントの分布図。引用させていただきました。

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またバスに乗り、丸岡城へ。1時間ほど揺られた。観光地から観光地へ。結構乗客は多かった。

丸岡城は現存12天守の一つ。北陸ではここだけである。平日にもかかわらず、結構な数のお城ファンで賑わっていた。

最近の研究によると今の建物は江戸初期の寛永年間のものらしい。ただ、戦後まもなく発生した福井地震天守閣は倒壊。しかし崩れた部材を使って数年後に再建したという。説明板を読んで初めて知った。コンクリート造りの城が数多く復元されていた時代にも関わらず、丸岡城のこの取り組みには感心させられる。

熊本地震で被災した熊本城も、石垣のひとつひとつまで元通りにする復元作業が延々と続いている。ナチスに破壊されたワルシャワの町並みも数十年かけて元通りににしたという。建物、町並みへのこの思い、大切なことだと思う。頭が下がる。

カップルだらけの東尋坊

日がだいぶ西に傾いてきた。最終目的地の東尋坊へバスで向かう。
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芦原温泉を通過する頃、乗客は私のほか地元のおばちゃんが一人二人。やがてバスは日本海へ。旅情がウズウズと湧いてくる。

冬場は風雪がかなり強い場所なのだろう。確かこの年の冬、福井は豪雪に見舞われた。九州の人間は北国への憧れが強い。無い物ねだりである。ただ、ここ最近の気象を見ていると、南国より北国の方が安全のような気がしている。

東尋坊に到着。バス停から5分ほど歩くと崖の上に出た。思ったより荒々しい感じがしない。どちらかと言うと雅な空気さえ漂うくらい。もっと高さがあり、ドッシャーンと荒波が打ち寄せる危険と隣り合わせな名所かと思っていた。危険度から言えば、天草西海岸の勝ちだろう。

それでも夕陽に照らされた柱状節理は陰影がはっきりして見事だ。おそらくは日本を代表する夕陽スポットなのだろう。あちこちで若い男女が寄り添っている。訳ありな感じの中年カップルも。それをちらちらと見る一人旅のおやじ。いかんなぁと反省しながら帰途についた。