一人旅おやじがゆく

旅することが人生の最大の喜びである旅好きが、各地で見たもの感じたことを淡々と記します。

倭王武の名がある江田船山古墳

どうも。旅するおやじ旅生です。

今回も古代史です。何しろ地元熊本は古代史に関係する遺跡が豊富にあります。

そこで今日は、日本最古級の文章が刻まれた太刀(国宝、東京国立博物館所蔵)が出土した江田船山古墳(和水町)に行ってきました。

 実は初めて行きました。若い頃、近くの駐車場に車を止めて昼寝をしたり車を掃除したり、あるいは隣接地にある「肥後民家村」を訪ねたことはあったのですが‥。いかに学問的関心が薄かったのか、我ながらちょっと呆れてしまいます。

5世紀後半の築造

古墳はなんと、若い頃昼寝をした駐車場のすぐ目の前でした。先月訪問しました、筑紫君磐井の墓とされる岩戸山古墳(福岡県八女市)と同じ前方後円墳ですが、規模はずっと小さいようです。ただ周囲は完全に公園化されていて、清々しい空気に包まれていました。ちなみに5世紀後半の築造だそうです。

ちなみに太刀に刻まれた文章の現代語訳はー。

「天下を治めていた獲加多支鹵大王(雄略天皇倭の五王の武)の世に、典曹(役所の仕事)に奉事していた人の名前は无利弖(ムリテ)。八月中、大鉄釜を使って、四尺(1M強)の刀を作った。刀は練りに練り、打ちに打った立派な刀である。この刀を持つ者は、長寿して子孫も繁栄し、さらにその治めている土地や財産は失わない。刀を作った者は伊太和、文字を書いた者は張安」(和水町のHPより)

おそらくは渡来人の指導で刻まれたのでしょうね。

実はこの刀は明治初年に地元民が発掘。他の副葬品と一緒に明治政府が買い取ったので、現在は東京にあるというわけです。文字が一部はっきりしなかったため、当初は雄略天皇ではなくその三代前の反正天皇(珍)と見られていたようですが、昭和53年に埼玉稲荷山古墳で出土した鉄剣の銘文と比べ合わせた結果、雄略天皇とする説が有力となったそうです。確かに昭和40年代に出版された本には、反正天皇としてありました。

ところで雄略天皇とはどのあたりの時代のどんな人なのか。

雄略天皇とは

卑弥呼魏志倭人伝に登場するのが弥生時代の終わりに近い西暦230年頃なので、その150年後くらいの大和政権の大王ということになります。そしてその100年後くらいに蘇我氏が勢力を拡大し、推古天皇聖徳太子が出て遣隋使を派遣する時代になります。そして645年の大化改新へと続くのです。奈良時代になるのはその65年後。

雄略天皇は大和政権をグイグイ拡大させた倭の五王(賛珍済興武)の最後を飾った人。古代史の本を乱読し始めて知ったのですが、応神王朝と呼ばれる時代です。では応神王朝とは何なのか。

天皇家に関する学説

戦前まで天皇家神武天皇以来、血統が途絶えず続いてきた(神話の部分も含め)とされてきましたが、戦後の学界の開放的空気の中、天皇家に関するいろんな説が出てきました。

まず初代の神武天皇から9代目までは実在せず、10代の崇神天皇が大和政権の初代天皇(当時は大王)であったー。その崇神王朝も15代応神天皇の登場で王朝が交代したー。応神王朝も武烈天皇で血筋が途切れ、越前の豪族から出た26代継体天皇応神天皇から五代の子孫とはなっていますが)が大和政権を乗っ取ったー。などといった学説です。

個人的に大変興味深い部分です。おそらくは大陸の知識を次々に運び入れた渡来人の動きも大きく影響しているのかも。東アジア的規模での連鎖があったのでしょうね。

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下の写真は江田船山古墳の方墳部分から見た円墳部分。岩戸山古墳の時もそうでしたが、何故だか古墳の上で撮影した写真はブレています。ちょっと怖い。
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円墳部分の鉄の扉を開けると、石室を見学できました。外は30度近い厚さでしたが、中はひんやりしてました。
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岩戸山古墳と同様、ここにも石人。磐井の勢力エリアである北部九州だけに存在しているそうです。そして磐井の死に合わせるように石人は姿を消すそうです。
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古代史とは関係ありませんが、江田船山古墳の割と近くに前々回の大河ドラマの主人公だった金栗四三さんの記念館がありました。ガイドの方々が大変丁寧に説明してくれました。入場無料。ドラマは低調でしたが、行く価値ありです。
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