一人旅おやじがゆく

旅することが人生の最大の喜びである旅好きが、各地で見たもの感じたことを淡々と記します。

まつろわぬ熊襲の地の古墳

どうも。旅するおやじ旅生です。

久しぶりの投稿です。

半年以上前、キャンピングカーの購入を決めたこと書きました。納車は今月下旬。いよいよという感じですが、なぜだか実感がありません。その時の記事もどうぞ読んでください。

noaema1963.hatenablog.com

キャンピングカーの納車とともに今乗っているプリウスαは手放すことになります。買ってから6年。思えば熊本地震の2カ月ほど前でした。仕事でも使ったので走行距離は約10万キロになり、やはり愛着はあります。

せめてこの燃費抜群の車を思う存分乗り尽くそう。それがせめてもの恩返し(なんだか訳がわかりません)。で、日帰り遠距離ドライブに一人出掛けました。

行く先は宮崎県えびの市。目的はヤマト王権に反発した熊襲の地を訪ね、その古墳を見ること。ついでに温泉を楽しもうと。あの辺りの温泉に最後に入ったのがもう2年前。時が経つのは実に早い。その時の記事です。よければ。

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熊本市の自宅を出た旅生、まずは朝マック。いつものチキンクリスプマフィンのセット。乾いた食感がたまりません。幸せな気分に包まれ、iBookで神話学の巨匠上田正昭の著作「私の日本古代史」をじっくり堪能しました。なぜ外で読むと本に集中できるのでしょうか。家で読むとすぐ眠くなるのに。

古代史は「なんちゃって研究者」や「地元におもねる研究者」が多く、みな好き勝手なことを主張するので、乱読は禁物と最近思います。いい加減な主張が頭にこびり付き、混乱させられます。旅生は学歴はほぼ気にしないのですが、さすがに古代史の学者に関しては、学歴や肩書き、研究歴が気になります。

そんな中、上田氏は安心して知識を吸収できる奥深さを感じます。

 

さてマックを出た後は九州自動車道を走り、えびのインターで下車。早速「近くの古墳」とググってみると、ありますあります、すぐ近くに「島内地下式横穴墓群」。8年前に調査され、1500年前の大量の副葬品を納めた地域首長墓がほぼ完全な状態に発見されたのです。

築造年代は5世紀末〜6世紀初頭。ヤマト王権で言えば雄略天皇継体天皇のあたり。筑紫では磐井の乱も起こり、王権がガタついた興味深い時期です。

地下式横穴墓は南九州の一部、えびの市から都城市あたりに多く存在する墓。この地域には「ヤマト王権の象徴」である前方後円墳の築造ブームは届くことなく、古墳時代中期においてヤマト王権の勢力外であったことを意味しているように見えます。すなわち景行天皇や息子のヤマトタケルが征伐に向かった熊襲の国の墓ということでしょうか。

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こうした「ヤマト王権と在地勢力の対立」が墓制に現れていると見る向きは、20世紀半ばまで盛んに主張されていたようですが、Wikipedia先生によると「大陸からもたらされた横穴系墓制の情報が、当地では地下式構造を採用する形で取り入れられたものである」「他の地域から孤立・隔絶した風土の中に生まれた墓制ではなく、朝鮮半島畿内政権との活発な地域間交流を通じて成立した墓制」とする理解が有力になっているらしいのです。

確かにそうなんでしょうが、ロマンに欠けるなぁ。

何か最近の古代史研究の切り口は「戦い」より「交流」を重視しますね。箸墓古墳の周囲で見つかった多様な土器から、ヤマト王権は初期においても、各地(吉備から尾張あたり)の王たちが支える連合政権であり、そこでの話し合いで前方後円墳が生まれた、という話のノリとどこか似ています。話が雑で間違っていたらすいません。

古代史研究は津田左右吉記紀批判で大きく方向転換し、戦後しばらくはその延長線上で一つの画期を迎えた感じがします。でもその後、調査研究が進むにつれ、情報が精査されて次第に大人しく地味なものになっているような気が。もちろん興味を持ち始めて1年しか経たない素人の感想なので、スルーしてください。f:id:noaema1963:20220111202629j:image

地下式横穴墓は地下の空洞に遺体や副葬品を納めるため、土に触れずに腐食が進みにくかったようです。

このあたりの地下式横穴墓群は戦後の開拓でだいぶ破壊されたらしく、現在、古墳とわかる形で残っているのは、真幸村古墳だけのようです。
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ところで今回の日帰りドライブで一番の収穫だったのが、ある本の購入でした。

他県に行ったらなるべく本屋に入って「郷土の本コーナー」に立ち寄ります。地元熊本では読めない本を見つけるためです。今回、京町温泉の本屋で手に入れたのが「古代日向・神話と歴史の間」(北郷泰道著)。

1年前、旅生は「宮崎がなぜ天孫降臨の地なのか」と疑問に思ったことをブログに書きました。宮崎県職員として長く県内の古墳発掘調査に関わった北郷氏(昨年秋に死去)は、このあたりの疑問にドンピシャリ焦点を当て、考古学と文献史学をうまい具合に絡めて、書き綴っている本です。宮崎日日新聞に執筆した記事なども収録されており、一般の方々にもわかりやすく書いてあります。

「そうだったのか」「確かに確かに」と膝を叩きたくなる内容です。

本の中身は次回に回します。もうちょっと自分の中で消化してから紹介します。

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ちなみに温泉は京町温泉(京町観光ホテル)と近くの原口温泉の2カ所に入りました。両方ともいい湯でした。特に原口温泉は個性的でした。コーヒー色したモール泉。建物は古いが趣あり。受付のおばちゃんが「洗い場のお湯は使わないで。体を洗う時は浴槽のお湯を使って」と少々煩かったですが(貼り紙2枚にも同じことが書いてありました)、それはそれで印象に残りました。