一人旅おやじがゆく

旅することが人生の最大の喜びである旅好きが、各地で見たもの感じたことを淡々と記します。

三国峠を越えたら別世界だった

旅吉です。

いよいよ上州から三国峠を越えて越後に入りました。実は楽しみでした。

 

この日のスタートは群馬県沼田市河岸段丘の町として有名です。ブラタモリでも紹介されていました。タモリのお気に入りの地形なのです。

なにしろ上越線沼田駅から、市役所や沼田の城下町がある市街地まで100メートル以上の坂道を登ります。なので「天空の城下町」と呼ばれています。で、市街地を歩いていても、そんな段丘の上にいる感じが全くしません。ただ、ちょっと裏道の方に入っていくと家並みが途切れ、薄暗い崖が現れるのです。小説の題材になりそうな町です。

城跡から駅のあたりを見下ろしたのが下の写真です。城跡には樹齢400年の御殿桜が咲いていました。沼田は長野県の上田、松代と並び「真田一色」です。六文銭の赤い旗が至る所に翻っています。

f:id:noaema1963:20230328092641j:image
f:id:noaema1963:20230328092644j:image

三国峠方面へしばらく行くと豊臣秀吉の北条攻めのきっかけになった名胡桃城跡。北条軍が秀吉の命令に従わずにこの城を攻めたので、北条征伐の理由ができてしまったのです。
f:id:noaema1963:20230328092648j:image
f:id:noaema1963:20230328092652j:image

国道17号線を北へどんどん進みます。関越道を使う人が多いのか、交通量はかなり少なめ。途中でいくつか温泉がありましたが、その誘惑に負けずに国境(くにざかい)へ。
f:id:noaema1963:20230328092656j:image

上州側の最後の宿場である永井宿。かなりの急斜面に家々が支え合うように立っています。標高は800メートル。雪はありませんでしたが路面が凍ったら歩くことすら出来ないのではないかなと思いました。
f:id:noaema1963:20230328092703j:image

標高はさらに上がり、少しづつ雪国の様相に。思えば、この大変な道筋を上杉謙信の軍勢が越えたわけです。義侠心からの関東への遠征だと聞きますが、標高1300メートルの三国峠を越えて北条氏の小田原城まで数百キロ。感心させられます。

この上杉謙信三国峠越えを「越山」と言うらしく、田中角栄氏の「越山会」はここから命名されたとか。越後の人々の「関東への思い」が伝わるエピソードです。有名な「越後の瞽女さん」たちにとっても関東は稼げる場所だったらしく、苦労してこの峠を越えました。

ちなみに最後の瞽女さんは昭和52年まで活動されていたそうです。旅吉が中学生の頃。もっと昔のことかと思っていました。新潟県南魚沼市の図書館で調べました。

峠に近づいたので、振り返って写真を一枚。

f:id:noaema1963:20230328092707j:image
f:id:noaema1963:20230328092710j:image

たぶん下の写真は峠近くの群馬県側の風景だと思います。
f:id:noaema1963:20230328092714j:image

長いトンネルで昔の峠の下を通り過ぎました。川端康成が言う通り、トンネルを抜けると見事にがらりと景色が変わります。積雪量が全く違い、新潟の湯沢町に入って間も無く苗場スキー場がドーンと現れるのです。子供の時に見た芸能人のスキー大会は必ずこのスキー場でした。

写真ではうまく伝わりませんが、高層のホテル群がとにかく巨大です。見たことないので例えが悪いものの、「チベットポタラ宮はこんな存在感ではないかな」とイメージしました。
f:id:noaema1963:20230328092717j:image
f:id:noaema1963:20230328092721j:image
f:id:noaema1963:20230328092724j:image

雪の深さは平野部の南魚沼市に入ってからも変わらず、霧雨と相まって幻想的な風景を醸し出していました。長谷川等伯の「松林図屏風」のようです。等伯はこの屏風で故郷である加賀国の景色を描いたと言われています。
f:id:noaema1963:20230328092727j:image

南魚沼市の町を歩きました。雁木がいいですね。雪国らしい。熊本在住者としては雪国のいろんなことを新鮮な驚きで見てしまいます。
f:id:noaema1963:20230328092731j:image

翌日の朝、魚沼市の西福寺を訪問。「越後のミケランジェロ」と最近言われている石川雲蝶(幕末〜明治に活躍)の彫刻に度肝を抜かされました。「過剰」だとは思いますが、その力強さゆえ、言葉を失ってしまいました。
f:id:noaema1963:20230328092739j:image
f:id:noaema1963:20230328092735j:image