一人旅おやじがゆく

旅することが人生の最大の喜びである旅好きが、各地で見たもの感じたことを淡々と記します。

ウッシーとの日々の舞台へ

旅するおやじ旅吉です。

 

北海道に憧れを持つきっかけになったのは、ドラマや映画が大きかった。「北の国から」「駅ーステーション」「キタキツネ物語」。「男がつらいよ」にも網走や小樽がロケ地として出てくる。

それとは別に、はた万次郎さんのエッセイ風漫画「ウッシーとの日々」も旅吉の心に深く刻み込まれている。

はたさんはもともと北海道出身。上京後に漫画家として活躍したが、30歳の時に北海道にUターンすることに。それも実家ではない。誰も知り合いがいない、観光地でもなんでもない、それまで存在さえ知らなかった下川町に移住する。

はたさんは下川町で半分崩れかけた住宅に住み、子犬のウッシーと一緒に新たな生活を始める。で、その暮らしを描いたのが「ウッシーとの日々」なのだ。

漫画週刊誌に連載されていたのは昭和から平成に変わった頃だった。もう30年以上前である。

旅吉はその頃、社会人になって4、5年目だった。かなりハードな日々を送っていた。連日、真夜中の12時過ぎまで仕事をしており、休日出勤も少なくなかった。疲れ切っていた。その割には仕事ぶりを認められていない思いもあり、ストレスから自律神経がかなり乱れた。どうにか持ちこたえていた。

そんな時に目にしたのが、この「ウッシーとの日々」だった。アルバイトの大学生が持っていた雑誌を時々借りて読んだ。実に癒された。というか日々の「支え」に近かったかな。

北海道というと大自然、温泉、グルメなどに目が行きがちだが、その一方、個人的には「意外とし〜んと静まりかえった寂しい地方」という印象も持っている。カラスの鳴き声や風の音ばかり響き渡っている町もある。それはそれで魅力とまでは言わないけれど、北海道の個性の一つだと思う。

この作品には、そうした北海道の良さと寂しさが見事にマッチしていた。主人公のはた画伯はちょっと間の抜けた移住者として描かれ、そこそこ大変でそこそこ変化に富んだ愛犬との暮らしが淡々と綴られている。

そして移住というテーマが「今いる場所ではない別のどこか」に逃げ出したくてたまらなかった旅吉に、これまた見事にマッチした。

当時は今ほど「別の地方への移住」が受け入れられていなかったように思う。なんせバブルの真っ最中だ。社会的には移住など「負け組(なんて言葉はまだなかった)の戯言」としか映っていなかった。もちろん、はた画伯は東京で一定の成功を収めた後の移住。それがこの漫画に安定感をもたらしているのかもしれない。

で、今回の旅で初めて下川町を訪ねた。

名寄市から東へ車で20分ほど。ググってみると知ったが、下川町出身者には伊東や葛西など有名スキージャンパーがずらりといる。町営スキー場にはジャンプ台もあり、子供たちの合宿にしばしば使われているとか。

旅吉がとりあえず行ってみたのが、下川版「万里の長城」。町おこしが盛んだった90年代に造られたミニ長城みたい。

なぜ下川町に万里の長城?と思って調べたら、中国旅行をした町職員が万里の長城にいたく感動し、地元にミニ長城を造ることになったらしい。90年代っぽいなぁ。あの頃はイケイケドンドンだったから。「何かやらなくては」という空気に満ちていた。

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万里の長城から見える下川町の町並み。この町も道路幅がすごく広いです。みんな大好きセコマもありました。考えてみると町の規模からすると有名人がひどく多い。
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ウッシーとの日々の表紙。ネットからコピーさせてもらった。
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下川町から再びオホーツク沿岸へ。興部町でラーメンを食べた後、町立図書館で、漫画ではなくはた画伯の「移住日記」という本を読んだ。そこで知ったのだが、画伯の住む集落は、興部に来る途中で通過したみたい。事前に調べておけばよかった。惜しいことした。

はた画伯は私より一つ年上。まだ元気で漫画や文章を書いていらっしゃるようです。