一人旅おやじがゆく

旅することが人生の最大の喜びである旅好きが、各地で見たもの感じたことを淡々と記します。

落としたハンカチの話

熊本に今年初めての木枯らしが吹いた日、不注意にもハンカチを落としてしまいました。

もう何年も使ってきた馴染みの深いハンカチです。帰宅して気付いた時は「あらら…」と残念な思いになりましたが、あえて探し回るまではしませんでした。

 

その2日後の朝、会社の通用口に近い道端にそのハンカチが落ちているのを発見しました。

旅吉はいつもきちんと畳んだ状態でハンカチをポケットに入れているのですが、発見した時はぐちゃぐちゃに汚れた状態で、車に敷かれたのかぺちゃんこになっていました。

旅吉はどうしようか1~2秒ほど迷いました。なぜだか周りをキョロキョロ見回しました。ただ拾って持ちかえるにはあまりにも悲惨な状態だったので、見て見ぬふりをして会社へ急いだのです。

激しい罪悪感に襲われました。瀕死のわが子を見捨てた気分。でもまぁハンカチだから、と頑張って気にしないことにしました。

その日の帰り道も、その翌朝も、ハンカチを見ることはありませんでした。「だれかが処理してくれたんだな」と変な安心感を覚えました。

 

しかし3日目の夜、会社の通用口を出た時、ふと思い立ちました。「だれかがどこかにハンカチをよけてくれたのではないか」と。

で、月明かりを頼りにハンカチを見かけたあたりを探してみると、ありました。道路横の金網の上の方にかけてあったのです。

たぶん誰か優しい女性(男性なのかも)が拾い上げて金網にかけてくれたのでしょう。持ち主が気づいてくれることを期待して。

旅吉は迷うことなくそのハンカチを手にしました。これ以上、罪悪感を味わいたくない、その一心で。だれでも同じ行動をしたと思います。

車の中でよくよく確認してみると、それほどボロボロというわけではありませんでした。まだ十分に使えそうです。

帰宅して手洗いしたうえで、丁寧にアイロンをかけ、ほかのハンカチと一緒に所定の場所へ直しました。

あすはそのハンカチを使ってみようと思います。

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