旅吉です。
憧れの北アルプスに挑戦した。それがなんと日帰り登山。いきなり山小屋宿泊は敷居が高い。山の経験豊富な人々の中で一人小さくなっている自分を想像すると、さすがにつらい。まずは日帰りで行けないものか。そんな山はあるわけないか、と思ってAIに聞いたところ、ちゃんとあった。それもいくつか。
山好きならご存じだろうけど、乗鞍岳がその代表みたい。標高2700メートルまでバスで行ける。そこから300メートルあまり登れば頂上だ。前回書いた木曽駒ヶ岳と似た塩梅。
でもそれでは物足りない。もっと北アルプスらしい大げさな登山を‥。というわけでスキーで有名な八方尾根の先にある唐松岳を目指した。標高2696メートルの日本三百名山の一つなのだ。
早朝、白馬村の中心地を通り抜けて標高1500メートルの黒菱駐車場へ。8時15分に動き出したリフトを乗り継ぎ、標高1800メートルの八方池山荘へ。ここから登山スタートだ。八方尾根をずっと登っていくと、後立山連峰の稜線にたどり着くという形だ。

八方尾根の眼前には白馬岳や白馬鑓ケ岳が、朝の光を浴びて堂々と鎮座している。九州の人間からすると桁外れの存在感だ。阿蘇や九重連山ではとうていかなわない。この段階で「来て正解だった」とウルウル気分だ。
ちなみに唐松岳は登山道の奥の方にあり、ちょっと見えにくい。唐松岳登山だが、主役は終始、白馬の山々という感じもする。下の写真の真ん中が唐松岳。この角度から見るとちょっと地味め。

リフト駅でスタッフが繰り返していた。「午後4時半でリフトは止まります。絶対に乗り遅れないでください」。そう、そこが日帰り登山の一番の課題なのだ。与えられた時間は7時間半。「ぎりぎりになっても頂上まで登るか、時間の余裕をもって引き返すか」を自分一人の判断で決めなくてはならない。
登山スタート。リフト駅から一時間ほど登ったところにある八方池目当ての人も多いから、登山の格好はばらばら。街歩きのような外国人観光客も。
北アルプス初体験の旅吉は「絶対に無理はしない」と登る前から決めていた。登りながら「昼過ぎの12時半前後に適当な場があれば、そこで折り返す」と考えた。
体長は万全だ。木曽駒ケ岳の反省から、前夜はたっぷりと寝て、朝食はしっかり取り、自分のペースで登っていく。北アルプス慣れした人々がぐいぐいと登っていくが、それは気にしない。


やがて八方池に到着。「ここから先はきちんと登山の装備をした人だけ入山OK」みたいな看板あり。旅吉の装備がどのレベルか自分では判断できないが、「たぶん大丈夫」とぐっと気が引き締まる。白馬をバックに写真撮影する若者やシニア夫婦を横目に、さっそうとした気分で先を急ぐ。



扇雪渓、丸山ケルン、といかにも北アルプスっぽい場所が続く。振り返ると、雲海の向こう側に遠く八ヶ岳や南アルプス、そして薄っすらと富士山。
ダケカンバが見事に紅葉していて、やがてその姿も消えた。森林限界を超えたのだ。九州人はこれが一番興奮する。九州では屋久島の宮之浦岳だけにしか森林限界が存在しない。登ったことないけど。




そして白っぽい砂や石、濃い緑のハイマツの景色になった。正午過ぎ、唐松岳の頂上に登山客の姿を認められるあたりまでたどり着いた。下山してきた人に「頂上まであとどれくらいですか?」と聞いたところ、あと40~50分くらい、との返事。
迷った。微妙な時間である。登り続けながら、想定を繰り返す。
午後1時に登頂できたとして、残された時間は3時間半。登頂に4時間ほどかかっていることになるので、おそらく下りのリフトはぎりぎりだろう。どうしよう。ガイドさんが一緒なら判断してくれるのだが、頼りになるのはYAMAPのアプリと自分の勘だけである。
結局、後立山連峰の稜線まで「あと10分ほど」(下山後に分かった)という標高2600メートルを少し超した地点で引き返した。唐松岳の9合目~9.5合目くらいの場所のはずだ。時間は12時20分。確か下の写真あたり。

でも十分に満足した。あせって下山して転倒でもしたら目も当てられない。場所によれば数十メートル滑り落ちる可能性もある。
しかし我ながら慎重だなと思った次第である。「あと10分登れば、頂上まで行けずとも連峰稜線の違ったダイナミックさを堪能できたかも」と後悔もしたが、初回なのでこんなものだろう。何しろネットでかき集めた情報とすれ違う登山者から聞いた話で登っているのだから、不確定さがつきまとう。
午後になって雲が増えてきた。山麓の温められた空気が上昇して雲になる様子が目の前で見れて、それはそれで素晴らしい。
リフト駅に着いたのは2時50分ころ。「まぁ頂上まで行けないこともなかったかな」と思ったが、結果論でしかないよね。あと1時間長くリフトが動いてくれればなぁ。

紅葉は黒菱駐車場あたりが一番きれいだった。