旅するおやじ旅吉です。今福井県です。もうそろそろ一度家に帰らないとまずいかな。
遅ればせながら、富山県訪問を報告します。富山県では行こうと予定していた場所がいくつかあります。
一つは新潟県に近い富山湾に面した朝日町。ここでは映画のロケが行われています。2カ所目は散居村が広がる砺波平野。3カ所目は定点観測となっている高岡市の伏木。
朝日町は以前の記事で書いた映画「えきすとら」(武田鉄矢主演、1982年制作)の最後の最後に出てきます。
売れない俳優である主人公が、旅芸人の一座と一緒に列車で移動している場面。車窓に流れるのは日本海とその手前に等間隔で並ぶ小屋のような建物。浪人時代にその映画を見た旅吉は「あの建物はなんだろう」と記憶に残り、それからおそらく2度(1回目は大学時代、2回目は10年前の一人旅)、列車(当時は北陸本線)からその風景を見ています。
でも実際に近くに行ったのは今回が初めて。場所は新潟との県境にごく近い場所でした。その名も「境」地区。国道8号線を走るとそれらしき場所を発見。
まずは海側から、次に線路を挟んだ反対側(集落になっています)から確認し、「ここで間違いない」と確信しました。
で、どんな建物だったのか。答えは漁具を入れておく木造の倉庫でした。小さな住居に見えなくもないのですが‥。通りかかった若い女性に聞くと「私も最近移住してきたばかりなので、わかりません」との答えでした。旅吉としてはら長年の疑問を解決できたような感じで、達成感を味わいました。
集落のすぐ近くにある食堂で人気の「たら汁」を食べました。確かに量が多くて素朴で美味しかった。食べた後気づいたけど、YouTuberが誰か紹介していたような。
ちなみに30年ほど前、この朝日町(あるいは隣接する入善町?)であの名作映画「少年時代」のロケが行われました。旅吉は仕事の関係でロケ現場を訪ねました。原作は「長い道」。その名の通り、富山湾に続く緩やかな扇状地にはいくつもの長い道があり、ロケは木造の古い小学校が使われていました。
ただ再度訪ねたものの、どのあたりだったのか、ネットで調べてもどうしても分かりません。地元のお年寄りに聞いたところ、だいたいの場所は覚えてらっしゃいましたが、その小学校もなくなったとかで、明確には分かりませんでした。せっかくの名作なので何かしら記念になるものを残せばよかったのに。
さて話は変わって砺波平野の散居村。と言われても多くの人はピンとこないでしょうね。
通常、農村集落が1カ所に密集して住まれることが多いです。わが故郷の熊本で見てみると、山々の麓に固まって集落があります。いかに広く農地を確保するかの知恵だったのでしょうね。
しかし砺波平野は、それぞれの農家が分散して居住しています。村ではあるが集落がないのです。それぞれに背の高い防風林が必ずあり、建物も立派。旅吉からすると、村の小さな社がたくさん点在しているような不思議な景色に見えます。
なぜこんな散居村ができたのか。砺波郷土資料館の学芸員さんと話していたら少しずつ見えてきました。「砺波平野は広く、雪解け水の伏流水の影響で農地を開拓しやすい条件が揃っていた」「固まらずに散居することが農作業をするのに合理的と判断された」といったことのようです。
旅吉はこの合理的という言葉に反応してしまいました。大学時代に知り合った富山の方々(多くは高岡高校出身者でしたが)は勤勉実直で無駄がなく合理的な人ばかりでした。簡単に言うとクールで静か、馬鹿騒ぎする人はいませんでした。その後も「県民性」の本など読むと、そうした気質を示す記述ばかりです。
普通であれば「横並び」「同調」(監視というニュアンスさえ含む)に進みがちな日本人なら、固まって暮らすことをよしとするのではないかと思いますが、おそらく砺波の人々は「そんなことは無駄。より生産性を上げるべき」と考えたのではないかと推測しています。もちろん旅吉の勝手な妄想ですが、当たらずとも遠からずではないかと。
ちなみに砺波平野は明治期、人口が過密になり(それだけ裕福だったのでしょう)、北海道などへ移住された人がかなり多いとか。熊本もブラジル移民の多さでは全国1、2を競っています。
さて、定点観測の高岡市伏木へ。この時期なら北アルプスが綺麗なはず、と踏んで行きましたが、その通りでした。
海辺の東屋から北アルプス方面を見るとどれだけでも時間が過ぎていきます。それほど魅力的な景観。でも伏木の町並みはだいぶ寂れていました。北前船で賑わった当時の面影はあまり見えません。
今回は伏木の西側の氷見市、東側の射水市にも足を延ばしました。氷見市から見る北アルプスも良かった。町並みも寂れたとはいえ、しっとりとしたものがありました。新潟県の南魚沼市で感じた雪国らしさを感じました。
一方で射水市はベネチアっぽい趣が。確か映画のロケ地にもなったのでは? 訪ねた時間が遅かったので話を聞くことができませんでした。
富山って地味だけど、なんともいえない風情があるんですよねー。