一人旅おやじがゆく

旅することが人生の最大の喜びである旅好きが、各地で見たもの感じたことを淡々と記します。

5カ所の湯を巡る一人長距離ドライブ

心身ともにすっきりしないので、久しぶりに温泉ざんまいの1日を送ってみた。

まずは県内で1カ所

午前9時前に家を出て、お決まりのチキンクリスプマフィンの朝マックを食べる。周囲を見回すと60代くらいのおじさんたちがちらほら。「数年後には自分もこんな感じになるかな」と毎度の如く考えを巡らす。それはプラスの感情なのか、それともマイナスにイメージしているのか、実はよく分からない。複雑な思いなのである。しかし休日に日帰りドライブをなんの遠慮もなくできている今の状況は恵まれた状況と言えるのだろう。ふだんは不満ばかりこぼしているが。

そんなことを考えながら八代インターから人吉インターへ。人吉はとてもいい町だ。適当に古くて、適当ににぎやかで。中学生の時、さだまさしが「案山子」という唄に出てくる歌詞「城跡から見下ろせば青く細い川」について、「熊本でいえば、ちょうど人吉がそんな感じの町ですよね」と話していたのを聞いた。40年以上がたった今でも、人吉に行くと「案山子」が頭の中で流れるのだ。あの頃、さだまさしが大好きだった。買ったばかりのフォークギターでいろんな曲を練習した。いまでもギターを手にするとついつい「雨やどり」を弾いてしまう。

さて、球磨川から1キロほど南側にある「いわい温泉」に入浴。人吉では基本、この温泉か駅近くの「人吉旅館」を利用する。きょうは気温が低かったせいか、お湯の温度が少し低めだった。でも湯が優しくていい感じ。人吉の湯は少しだけ茶色がかった所が多い。露天風呂に長くつかる。なんとなくごちゃごちゃした庭ではあるが、椿と千両が鮮やかだった。北風が強く、雲がどんどん流れていく。サウナには入らず露天風呂の後、水風呂にざばっと入る。ちょうどいい温度だ。お湯の質、湯量、施設、清潔度ともにまぁまぁ。受け付け横の待合室にはパンフレット類などが多く、経営者の郷土愛が伝わる。なんと24時間営業らしい。入浴料300円。駐車場の紅梅がほぼ満開でした。

県境を越え宮崎県えびの市

えびの市には京町温泉郷、吉田温泉をはじめ霧島の中腹にも野趣溢れる温泉が多い。人吉からは山越えなので高速でするっと移動。

いつもは国道添いの温泉施設に入ることが多いが、きょうはネットでじっくり調べ、「京町観光ホテル」へ。京町温泉郷は閉館した旅館や施設が多く、「温泉街として終わりを迎えつつあるのかな」と実はちょっと思ったりしていた。

京町観光ホテルにもあまり期待せずに入ったが、これがいい具合に裏切ってくれた。実にいい湯だったのだ。寒気のためか内湯がいい感じに湯気で覆われている。「湯気が充満した温泉は3割方よく感じる」のが私の考え方。えびの市から隣接する鹿児島県湧水町の温泉はモール泉が多い。私はこのモール泉のファンだ。あの独特な香り、茶と緑ににごったお湯質。入っているだけで健康になりそうなりそうである。露天風呂もあった。あまり大きくないが、昼間で人がすくないせいもあり、ここでもゆったりと満喫する。ネットによるとお湯は「ナトリウム-炭酸水素塩・硫酸塩温泉」らしい。覚えてもすぐに忘れそうだ。入浴料400円。冷水のサービスもあり、気持ち良かった。

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風呂から上がるとすでに1時すぎ。最近全国各地で見られる「台湾料理」の店で昼食。えびちり飯とギョーザを食べる。予想より美味。お客も結構多く、地道に営業成績あげてそうな感じだった。

 

きょう一番の温泉

 

その後、国道を宮崎県から鹿児島県湧水町に入る。県境を過ぎてちょっと行った所に、「つるまる温泉」と書かれた大きめの看板を発見。霧島側に1キロほど入ると、昭和の雰囲気満載の古びた「鶴丸温泉」に到着。目の前に肥薩線の「鶴丸駅」があった。

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この温泉は素晴らしかった。やはりモール泉なのだが、赤ワインあるいはコーヒーに近い透明な赤茶色。ぬめりも強く、用心していないと転倒しそうなほど。やたらとお湯を腕や肩にかける自分に気付く。満足している証拠だろう。お年寄りみたいだ。おまけにだれもいなかったので、一人で「こりゃいい湯だ。素晴らしい。こんな温泉があったとは」とつぶやく。一人の時、私はちょっと奔放な性格になる。実は京町観光ホテルでも同じせりふをつぶやいたばかりだった。地元民御用達の温泉らしく、浴槽は4~5人も入ればいっぱい。そんな時、たぶん隅っこでおとなしく入るのだろう、私は。

ふと気付くと、茶室の入り口のような一片60センチほどのドアが。「もしかして」と開けてみると、ありました露天風呂。「やっぱりな」と得意な気持ちになってまたも露天風呂を満喫する。ここにも椿。そしてなぜだかBGMでオシャレなモダンジャズが流れている。ちなみに脱衣所でも流れていた。経営者の趣味なのだろうか。入浴料300円。

そして栗野岳温泉へ

すにで3軒入ったので帰ってもよかったのだが、まだ3時。もったいないので前進する。

迷った末、15年ほどごぶさたしている栗野岳温泉へ。標高700メートルの霧島の中腹だが、湧水町の商店街から、山道をすいすい進むと意外と早く到着した。以前はなかったと思われる西郷どんの看板がある。鹿児島には、西郷どん征韓論に負けて下野した後、熱を帯びる若き士族らから身を隠すように滞在した温泉があちこちにある。ここもそう。

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早速、竹の湯に入ると、記憶にある以上に「泥湯」だ。しかし実際に入ると、さらさらして気持ちいい。脱衣所の注意書きを見ると「冬場は湯量が減るので、泥の成分が強くなります」。なるほどそれでか。明治時代くらいに造られた浴場なのだろうか、城の石垣のように大きく四角い石でできている。のみの跡のような傷がいくつもあり、時代を感じさせる。入浴料350円。

4軒入ったのでさすがに湯疲れした感じもあり、帰途に就く。一般道で伊佐市水俣市を経由し、西回り自動車道で八代市へ。6時には帰り着きそうな勢いだったので、日奈久温泉の金波楼に入浴して帰った。結局5カ所。移動距離も長かった。しかしこの無意味なまでの日帰りドライブが私には欠かせないのだ。おそらく20年後も(生きていれば)きょうと同じようなルートをドライブしていることだろう。