一人旅おやじがゆく

旅することが人生の最大の喜びである旅好きが、各地で見たもの感じたことを淡々と記します。

人吉のカフェで写経をする

5年間過ごした八代を離れるのを前に、熊本市にいるとなかなか出向くことのない人吉球磨地域を妻と二人訪ねることにした。妻の話によると、人吉市の隣にある錦町に、なかなか良い感じのカフェがあるという。

すでに初老の入り口に立つおやじである。それもロマンスグレーの「素敵なおじさま」でもなんでもない。カフェを巡るなど「よしなさいって」と、どつかれそうだが、妻の話によると写経ができるという。なんとお寺が経営するカフェなのである。そんなんだったら良いかも、と高速道路を飛ばして中世文化の香りが濃厚な人吉方面を目指した。

初めての写経

新宮禅寺。熊本には珍しい黄檗宗の寺院である。場所は人吉クラフトパークをちょっと東側に向かった国道の南側。人吉球磨の日本遺産を構成する歴史ある寺院のようだ。残念ながら以前紹介した青井阿蘇神社や山田大王神社のような茅葺の建造物があるわけではないが、戦国時代末期から江戸初期に作られた仏像が並んでいる。中世が香る人吉球磨の記事は「世界遺産と日本遺産を考える」をどうぞ。

 

noaema1963.hatenablog.com

 

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寺の前にあるカフェに入ると癒し系の音楽が流れ、広々とした窓からは新宮禅寺や九州山地の山並みが春の日差しに輝いている。「やっぱ人吉球磨は素晴らしい」。おやじはそう心の中でつぶやき、抹茶とカフェオーレをミックスしたような飲み物を飲みながら、早速、写経に取り掛かる。

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実は写経は初めてだ。手本の般若心経の上に半透明の紙を置き、筆(ではなくサインペンのようなもの)でなぞっていく。「何事も作業の速さが己の真骨頂」と信じて疑わない初老おやじは、近くに座った若い女性らが1時間近くかけて丁寧に写経しているのを横目に、「そんなに遅くてどうする」とばかりに30分ほどで書き上げた。

不思議なもので見本を書き写したにも関わらず、出来上がったのがやはり、妙にギチギチとした私の字。ただ達成感は想像以上のものだった。「書き上げた」という感じ。義母が「お大師さん信仰」に熱心なので般若心経は以前から何度も耳にしたし、30代にして一人、四国でお遍路さんを演じた時もボソボソと般若心経を唱えたものである。般若心経は身近な存在なのだ。だから早々に書き上げることができたのかもしれない。その間、妻は下の写真にあるあんみつを無心に食べていた。

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カフェの後は鍾乳洞に

カフェを満喫した後は人吉温泉に入って、人吉に行ったら必ず立ち寄る青井阿蘇神社へ。何度行っても素晴らしい。よくぞこれほどの古式ゆかしい形を今に残してくれたものである。先人の気概に敬意を表するばかりだ。人吉万歳、国宝万歳である。

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高速道路に乗らず、球磨川沿いの国道を八代方面へ。球磨村にある鍾乳洞「球泉洞」に入る。確か20年ほど前、娘二人がまだ小学生だった頃に連れて行ったはずだ。あの頃の娘たちは素直で良かった。入場料一人1100円。久しぶりに入ると思ったより狭くて、距離も短かった。山口県秋芳洞と記憶がごっちゃになっていたのかもしれない。

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数年前に熊本地震を経験しているせいか、こういう閉じた空間に入ると、土砂崩れで閉じ込められはしないかと恐怖を感じる。しかしこの日は地震が起こることもなく無事外に出ることができた。あ〜よかった、とホッとする。それなら中に入らなければ良いのに、と反省するおやじであった。