一人旅おやじがゆく

旅することが人生の最大の喜びである旅好きが、各地で見たもの感じたことを淡々と記します。

実録 ヒグマに遭遇した旅生

どうも。旅するおやじ旅生です。

ブログに書くのにうってつけの旅の出来事がありました。忘れないうちに書いておきます。

あれは旅生が42歳の時。今から16年前の6月でした。

一人で北海道を旅しました。あまり長い休暇が取れなかったので、レンタカーで一気に道東をめぐろうと千歳空港からカローラフィルダーでスタート。

日高地方→襟裳岬(近くの浜辺で車中泊)→釧路→厚岸(ビジネスホテル泊)→霧多布→根室納沙布岬別海町(キャンプ場で車中泊)→羅臼知床五湖

釧路あたりまで天気に恵まれなかったものの順調に旅は進みました。

 

で、知床五湖を観光することに。行かれた方がご存知と思います。湖の周辺に木道が整備されており、観光客はその木道を歩いて湖を巡るのです。

知床は2度目でしたが、知床五湖は初めて。幅1メートルほどの木道を進むと、やがて50代くらいの夫婦が歩いていらっしゃるのに追い付きました。ところがこの2人、歩くのがとても遅い。狭い木道なのでなかなか追い抜けず、せっかちな旅生はイライラ。とうとう我慢できず「すいませんがお先に」と断って前に出て早足で歩き出しました。

その時です。10メートルほど前の藪の中から何か大きな黒い塊が木道にストンと降りてきました。ヒグマでした。その時の旅生の第一印象は「あれ、ここ放し飼いにしてるんだ」。なんとも呑気な感想でした。

しかしすぐに恐怖がゾワゾワと足元から這い上がり、歩いてきた木道をすすすすっと引き返しました。幸運にも追いかけてくる気配はありません。

すぐにさっきの夫婦とかちあい、「ヒグマが出ました」と伝えると、ちょっと山っ気のありそうな旦那さんが「見にいこう。そのカメラ貸してもらえんか」と言うので、「いやです」と断り、「早く逃げましょう」と入口へと引き返しました。

管理事務所の人にヒグマの目撃を報告すると、「ああ、またですか」とでも言いたげな慣れた態度で「目撃した時の様子をこの用紙に書いてください」と指示されました。少し大袈裟に遭遇した場所やその時の様子、ヒグマの大きさを書いておきました。

すぐに湖一帯への立ち入りができなくなりました。しかし今も思うのですが、ルートの奥の方にいた観光客はいったいどうなったのでしょう。

報告書は書いたものの、旅生はヒグマに遭遇した話を誰かに話したくてたまりません。

ちょうど入り口付近で入場できずに立ち往生していた観光客のおばさんたちがいました。係員から説明を受けると、「え、ヒグマが出たの。怖いわね〜」とざわついています。旅生はこの時とばかりその一団に近づき、「私が遭遇したんです。かなり大きいヒグマでした」と報告書よりさらに大袈裟に伝えました。

でも思うのです。普通、見ず知らずの観光客にわざわざ目撃談を話しますかね。この時の自分の行動、今でも思い出すと苦笑してしまいます。よっぽど気分が高揚していたのでしょう。

しかし思えば、実にラッキーでした。もしあの中年夫婦が旅生の目の前を歩いていなかったら、ヒグマと旅生は至近距離で遭遇していました。ただ事では済まなかったでしょう。

旅生は何度かギリギリの命拾いをした経験があります。この時もその一つに数えていいでしょう。人に自慢できるほどの幸運で恵まれた人生を送ってきたとは思いませんが、こうしたいくつかのラッキーを振り返る時、、「もしかしたら最後の一線を守ってくれているご先祖様でもいるのかな」と思わざるを得ません。

旅生はその後、知床半島から網走に出て、レンタカーを乗り捨て、特急列車でその日のうちに札幌へ。翌日、札幌を観光して空路、北海道を離れました。

短い旅でしたが、印象に残る道東一周になりました。