旅吉です。
自宅で風呂に入る時には必ずスマホか文庫本を持って入る。スマホはジップロックに入れてYouTubeを見る。文庫本はもちろんそのまま読む。
いつかお湯に落としてしまうのではないだろうかと気になっていたが、先日、初めて現実となった。
ちょっとした気の緩みだった。ブックオフで購入した柚月裕子の「蟻の菜園」を開いたところ、手から滑り落ちてしまった。あわてて拾い上げて乾いたタオルでふいたものの、前半3分の1ほど(ちょうど読んでいた部分)がすっかり濡れてしまい、ページをめくるのも難しい状態に。
自分の不始末にも関わらず、なぜか「イラっ」としてしまい、「いっそのこと全ページ水びたしにして、なきものにしてしまうか」と残酷な感情に包まれた。しかしどうにか思いとどまった。
風呂上がりに娘と妻にその顛末を語ったところ、二人から「短気過ぎる」と批判された。「俺が短気? 優しすぎるほど穏やかな俺が?」と返すも、呆れた表情をされるだけだった。
まぁ考えてみれば、短気さと穏やかさは、一人の人間の中において、ぎり両立するのかもしれない。しかし得てしてうまくいかず、犯罪者になってしまうケースも多いようで、「あの穏やかだった人が、まさか」と新聞の社会面に載りがちだ。
思い起こせば、旅吉の生きづらさの原因は、無理やりこの「困難なる両立」を成立させようとすることに源を発するのかもしれない。いや考え過ぎか。
ちなみにこの文庫本をエアコンのきいた部屋に置いていたら、翌日には完全に乾いて、ごわごわと膨れ上がっていた。きょう再度読み始めた。まだ100ページほどしか読んでないが、なかなか面白い。柚月裕子の小説は、硬質でハードボイルドな中身を柔らかい文体で書いてあり、いつも感心する。