一人旅おやじがゆく

旅することが人生の最大の喜びである旅好きが、各地で見たもの感じたことを淡々と記します。

セミの声に温暖化を知る

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夏の旅でいつも気になるのが、旅先でどんなセミが鳴いているか。

熊本では今の時期、クマゼミだけである。ワシャワシャとうるさくてたまらない。うちの庭のミズキの木には特に多くて、午前中などテレビの音が聞こえないくらいだ。

子供の頃は違った。熊本の子供たちにとって、クマゼミは苦労しなければ捕れないセミの王様だった。近くの山にセミ捕りに行くと、アブラゼミばかり捕れてうんざりした。ちなみに熊本市一帯にはミンミンゼミはいなかった。しかしテレビでセミといえばミンミンゼミ。図鑑で見るミンミンゼミは中肉中背でバランスが良く、随分と憧れたものだ。

クマゼミの話に戻るが、おそらく半世紀前、クマゼミの生息北限は今よりかなり南にあったはずだ。大学時代を過ごした東京では、クマゼミの鳴き声を聞いたことがなかった。東京はミンミンゼミオンリー。憧れのセミが鳴く地。やっぱ都会は違うと、とても嬉しかった。

ところが、である。20世紀も終わり近くになった頃、関東でもクマゼミが鳴き出したというニュースを熊本の地で知った。ちょうど吉本の芸人が東京進出を始めた頃で、大阪弁クマゼミのうるささを同一視して茶化されることも多かった。

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今回の山口県を中心とした旅。上の写真は萩市だが、聞こえてくるのはクマゼミだった。70歳前後のガイドの女性に「以前はクマゼミがいなかったのでは?」と聞くと、我が意を得たりとばかりに「そうなんですよ。昔はアブラゼミばかりでした」。やはりと私はにんまり。

ガイドさんの話は続く。「温暖化もあるのでしょうが、聞いた話だと、鑑賞用の南方系の木が多く持ち込まれたことで、一緒にクマゼミの幼虫が持ち込まれたとか」。なるほどなるほど。

「ところが私の実家がある萩市の東側の町には、クマゼミが全くいないんです。不思議です」。そうなんだ。そんなこともあるんだ。

ちなみに瀬戸内海に面した岩国では、ミンミンゼミが幅をきかせていた。西日本の平野部でもこんな場所があるのか、と感心する。

セミは温暖化をよく物語ってくれる。

ちなみにこのガイドさん、前回書いた石州瓦の話を振ると、「よくぞ気付いてくれた」とばかりに話に乗ってきた。「石州瓦は寒さに強いんです。ツルツルしてて雪が滑り落ちる。最近雪が減って、萩市でも10センチも積もれば大混乱ですが、雪の多い山里では、石州瓦はとても大事」だとか。

山陰らしい話である。