一人旅おやじがゆく

旅することが人生の最大の喜びである旅好きが、各地で見たもの感じたことを淡々と記します。

出張の合間に佐賀の古い町並み観光

旅するおやじ旅生です。

年末押し迫ったにも関わらず、佐賀市に出張。コロナ感染が拡大しているにもかからず、うちの会社も相手先も「どうにか大丈夫だろう」と許可が下りた。当然日帰りの主張である。

新幹線(年末なのにガラガラ)で新鳥栖まで行き、在来線に乗り換えれば、1時間半もかからず佐賀駅に到着。用件は午後からなので1時間半ほどの自由時間を捻出し、佐賀城下の北側を通る旧長崎街道を歩いてみた。

ついこの前、休みを使って長崎県大村市を訪ねたばかり。長崎街道はあの町も通っている。1週間も間をあけず、再び長崎街道の街を訪ねることに大いなる喜びを感じる旅生なのであった。これはあれだな、縁だな。

佐賀駅から佐賀城方面に南下すること15分ほど。佐賀の街を東西に横切る旧長崎街道にぶちあたる。さすがに薩長土肥の一角を担う旧佐賀藩だけあり、駅から延びる通りには、近代日本に貢献した多くの偉人の銅像が並んでいる。東京駅を設計した辰野金吾(1854~1919)も佐賀の出身とは知らなかった。

ネットで生存年を調べて気になった「1919年死去」。もしかして…と思ってよくよく調べると、やはりそうでした。「スペイン風邪に罹患して死去」。それにしても、スペイン風邪の猛威からほぼ100年後にコロナ感染拡大とは。ちなみに島村抱月大山捨松大山巌の妻で教育者)もスペイン風邪の影響で亡くなっている。

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佐賀市はあまり知られていないが、城下町の面影を結構多くとどめている。県庁所在地にしては小規模な町で、平野のど真ん中にあるため戦後の開発が周辺に広がっていったと推測している。それでいい感じの古さが町中に残ったのではないだろうか。

 

以前から何度となく書いた通り、筑後川に近いこのあたりの平野部がなんとも好きである。柳川、大川、佐賀、久留米あたり。分厚い歴史も質のいい温泉も、のどかな雰囲気もある。出張の相手先の人に「年に5~6回はこのあたりに来ている」と言ったら、喜ばれるというより、ちょっと驚かれた。

このあたりの良さがうまく描き出せている映画は「男はつらいよ」の第42作目「ぼくの伯父さん」。浪人生の満男が恋心を募らせる及川泉(後藤久美子)が転校した佐賀をバイクで訪ねる話。マドンナは檀ふみ。親父が九州出身のせいか佐賀弁が上手だった。

吉田修一(長崎出身)の同名の小説を映画化した「悪人」も佐賀がメインの舞台だった。妻夫木聡をはじめ主だった出演者はぼぼ九州出身という凝りよう。ただ作品自体は明るいものではなく、地方独特の暗澹たる閉そく感を見事に描き出した傑作である。何回見たか分からない。おすすめです。
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長崎街道は今でも商店街で一部はアーケード街になっている。

想像していたよりずっと賑やかで、脇道に入ると若者が経営するこじゃれた雑貨屋や洋品店もあり、今後どんな感じに熟成していくか楽しみである。
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商店街から東へ進むと、古い町並みが見えてきた。ここが今回の最終目的地である。明治18年に建てられたレンガ作りの旧古賀銀行(佐賀市歴史民俗館)がその中心。商業会議所などに利用された時代もあり、改装もされたが、現在は大正5年当時の姿に復元されている。中にはカフェもあり、佐賀の歴史を説明するパネルなどが並んでいて、なんともいい感じである。
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ほかにも旧古賀家、旧牛島家、旧福田家など全7館が周辺にあり、無料で公開している。いずれも佐賀市重要文化財だという。ちなみにこの一角は文化庁重要伝統的建造物群保存地区に指定されていない。

旅生の記憶では、九州の県庁所在地でこれだけの古い町並みをしっかり残しているのはこの佐賀市長崎市だけではないか。何度も言うが「古い町並みはつくるもの」。せっかくのいい材料もほっておけば「通常の住宅街」になってしまう。おそらくこの長崎街道沿いの古い町並み、あと20年したらさらに進化している気がする。楽しみだ。

などと感心していたら同僚から「先に着きました」とLine。急いでタクシーを探すが、全く走っていない。中規模の都市の中には「タクシーは呼び出すもの」という慣習があるので、佐賀市ももしかしたらそうなのかもしれない。結局、約2キロの道のりを速足で歩き切り、どうにか間に合った。まいった。

佐賀市は岡田三郎助を輩出するなど美術が盛んな町でもある。その話は別の機会に。