一人旅おやじがゆく

旅することが人生の最大の喜びである旅好きが、各地で見たもの感じたことを淡々と記します。

吉本の舞台を八代で見た

どうも。旅するおやじ旅吉です。

久しぶりにお笑いの舞台、見に行きました。

と言っても、なんばグランド花月ではなく、熊本県八代市。鏡文化センターという500人程度が入るホールで「漫才のDENDO宝くじ文化公演IN八代」という吉本興業のステージがありました。ホールが主催する自主文化事業というやつですね。

芸人たちがよく口にする所謂、「地方の営業」。

半月ほど前にこの公演のことを知り、どうにかチケット一人分手に入れました。

f:id:noaema1963:20221022200143j:image

上のチラシを見ていただくと分かるように、まぁまぁの顔ぶれです。

全体の感想から言うと、良かったです。満足でした。特にトリを務めたミルクボーイが印象に残りました。さすがM1優勝の実力派です。

実を言うと、ミルクボーイの行末が気になっていました。あのパターン化された漫才で進んでいけば、早い段階で飽きられてしまうのではないか。とんがった斬新な個性を求め続けるお笑い界において、どこか昭和を思わせる芸風は駆逐されてしまうのではないか、と。

でも生き抜いていますね。感心しました。

進行役を務める中田カウスが「お笑いに大事なのは、気迫です」と言っていた通り、ミルクボーイの漫才は実際に目の前で見ると、テレビ以上に気迫を感じました(もちろんそれが生の舞台なのではありますが)。「おかんが言うとったんやけどな‥」で始まる例の漫才で「ラジオ体操」「湿布」をネタにして飽きさせることはありませんでした。

定型の中に収まりながら、客を飽きさせない漫才ー。なんだか、季語を必ず読み込み五七五の型に収める「有季定型」の伝統的俳句(正岡子規に始まる「ホトトギス」の流れ)に似ているな、と思いました。ちょっと話が飛びすぎでしょうか。

ただ面白いことにも気づきました。

ミルクボーイの漫才に受けていたのは、どちらかと言うと高齢層や小さな子供たちでした。旅吉の隣の席にいた、「お笑いが大好き。この日が楽しみでした」といった感じの「笑う気満々」の30代らしき女性は、COWCOWの漫才で大爆笑していたものの、ミルクボーイの時の反応は今一つ。代わりに反対側の席にいた70代と思われる男性は率先してウケていました。

旅吉もお笑い保守派、高齢層お笑いファンなのだろうなと実感しました。

ところで熊本出身のからし蓮根。三冠王の「村神さま」と同じく九州学院高校の出身。この日は一番最初に登場してまぁまぁの安定感ある漫才見せてくれました。M1の決勝戦まで進んだ割には熊本での人気が今ひとつ(まぁ活動の拠点が大阪なので仕方ないのかもしれません)。「実際に見るとどんな感じなのだろう」と興味がありました。で、何度も書いてしまいますが「まぁまぁ」でした。何か爆発力がもう少しあれば。

ただ立派だったのは「故郷熊本」におもねなかったこと。まるで他県でやっているように「熊本が出身で」とさらっとスルーして、八代出身の松中信彦にチラッと触れたくらい。

まぁこの「故郷におもねない」は熊本人の大きな特徴ではあります。みんな故郷のことをそこそこ愛しているのに「熊本が大好きなんです」的な言動はあまり見せない。以前カラオケの席上で、ちょっとネジが緩めのおじさんが「熊本大好き!」と絶叫して、周りを絶句させてしまったことを思い出します。このあたり改めて一度分析せねば。

関西だったら「大阪、好きやねん」「やっぱ京都が一番と違いますか」とか言えるでしょうし、北海道とかも「この大地が一番安心できる」と堂々とつぶやけそうな気がします。でも「東京が一番に決まってんじゃん」とか誰も言わないかな。東京が一番人気であることは暗黙の了解なので、今更と言うことでしょうか。じゃ博多はどうだろ。「やっぱ博多が一番好きっちゃん」。言いそうだな。

話が漫才から大きく外れてしまいました。元に戻しましょう。

全くのノーマークだった「トット」、予想以上の面白さ。オーソドックスな芸風ゆえに吉本で頭抜けた存在にならないのかもしれませんが、十分過ぎる実力と器用さ、経験値を持っていると思いました。隣の席の「お笑い大好き30代女性」も存分にウケておりました。この女性、ウケる時は旅吉の耳が痛くなるほどの笑い声を出すので、どこが笑いのツボかよく分かりました。多分、霜降り明星とかを好きなんだろうな。

スーパーマラドーナを生で見るのは3回目。武智が少し太った感じ。達者にやってはいるのですが、そろそろ新しい変化が欲しいかな、と。

最後に中田カウスが話していて印象に残ったこと。「M1決勝が始まる時、スタジオで一番緊張しているのはだれか分かりますか?」。ん、決勝進出者?かなと思いましたが、答えは「観客」。なるほど、それは納得です。