一人旅おやじがゆく

旅することが人生の最大の喜びである旅好きが、各地で見たもの感じたことを淡々と記します。

ヒグマの報道が続く

旅吉です。

北海道に上陸して数日たつが、NHKのローカルニュースは連日ヒグマの出没がトップだ。二番手が季節外れの暑さ。ほぼ変わらない。

これまでも書いた通り、1人で森の中の散策道を歩いていると、やはり怖い。普通に1人で歩いている方を見ると「勇気あるなぁ」と感心してしまう。

今日流れていた報道では、ヒグマの保護が叫ばれ出した80年代から春季の駆除が減り、その影響で「人を恐れないヒグマ」が増えてきたらしい。ハンターも減っている。老練なベテランハンターは「このままではやがて大変なことになる」と話していた。

今回の旅で旅吉は、地元の方々へ機会があるごとに「ヒグマはこのあたりも出没するんですか」と聞いている。「出ますよ」と勢いこむ人もいれば、「まぁ話には聞きますね」と面倒くさがる人もいる。

なので実際の危険度がわからず、旅行者としてどんな対策を取ったがいいかピンとこない。里山歩きが好きなので尚更だ。

鈴を身につけたり、ラジオを流しながら歩いたり‥。ただ「それも通用しないヒグマが現れだした」とその報道でベテランハンターは話していた。

話は飛ぶが、吉村昭の小説「羆嵐」は衝撃的だった。留萌市の北にある苫前町で大正時代に発生したヒグマ騒動「三毛別羆事件」を題材にした作品。この時7人が亡くなっている。

現場には、開拓民の家を襲うヒグマの様子を再現した模型があるので、見に行った。

苫前町の海岸から内陸に20キロばかり。民家はなくなり、やがて舗装された県道も細い砂利道になる。天然林の中に入ってしばらくすると、誰もいない現場に出た。夕方4時半。鳥の声だけ響く。

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模型で当時を再現しているわけだが、ヒグマの大きさに愕然とする。こんなデカいのが襲ってきたらひとたまりもないだろう。それにしてもなんでもこんな場所まで開拓民が置かれたのか。森の中の渓流沿いなのに。いろんな思いがよぎる。

写真を数枚撮って、急いで現場を離れた。何しろ7人が亡くなった一帯なのだ。「来なけりゃよかった」とも思った。暗澹たる気分になった。

あまりに悲惨な事件ゆえに目を逸らしたくないのか、苫前町はヒグマをくまのプーさんみたいなキャラクターに仕立てて、あえて前面に押し出している。現場までの県道を「ベアーロード」と名付け、あちこちに看板を立てている。

現場に向かう途中、またキタキツネを見た。3回目。北海道に来てタヌキもサルも見た。カラスはわんさかいる。でもヒグマだけはホントにごめんだ。