一人旅おやじがゆく

旅することが人生の最大の喜びである旅好きが、各地で見たもの感じたことを淡々と記します。

親との旅はいまでも疲れる

嫁いだ娘の住みかを見たくて、両親も一緒に東京へ行った。

父が83歳、母が82歳。長らく自営業をやっていたこともあり、至って元気なつもりの2人であるが、年に1、2回同行する旅行の度に、いかんともし難い衰えを感じてしまうのである。というか、自分も還暦に近づき、日々体力気力の減退をひしひしと感じているのだから、何を今さらというところだ。

ちょうど1年前、伊勢神宮に一緒に行った時は、まだ元気で内宮、外宮とも問題なくお参りを済ませ、参拝客であふれ返る参道を歩いて、赤福など食べたものだが、今回の旅行ではとてもではないがそんなわけにはいかなかった。特に緑内障で視野がかなり狭まっている父親の衰えがひどく、耳もかなり遠くなっていた。それでも衰えを自覚したくないのか、周りに悟られたくないのか、周囲の会話がよく聞こえていないのに強引に割って入り、話の流れを遮ってしまう始末。レンタカーを運転していて、後部座席の父に声を掛けても正確に伝わらないらしく、とんちんかんな答えが返ってきたりする。後ろを向いて話すわけにもいかないので、大きな声で会話をせざるを得なくなる。そんなこんなですっかり疲れた。

東京からレンタカーで静岡方面に向かった。

両親とも富士・伊豆は何度か旅したことを、実際に静岡に向かっている際に知った。「それならそうと、早く言ってくれよ」とも思うが、「家でじっとしてるより、以前行った場所で構わんから、どこか行きたい」というところらしい。

小田原から箱根越えで三島へ。三嶋大社にお参りして、その日は静岡駅のすぐ横のホテルに宿泊。翌日、浅間神社駿府城跡、三保の松原日本平を巡って、海産物レストランが集まる清水港の一角で昼飯を食べ、高速を羽田へ向かった。なんとなく体調もすっきりしない状態だったので、あまり大きな感動はなかったが、富士山がいい具合に見えて、その点は満足だった。

20代に自分の会社を設立して、母と二人三脚である程度の大きさまで会社を成長させた父親は強烈な個性の持ち主であり、周囲もなんやかんや批判をしながらも、最終的にはその個性を尊重する。ただそんな父を持った息子は大変である。いつまでたっても父親が有利な立場にあり、息子は自らのふがいなさ、力のなさを実感し続けなければならない。衰えを感じさせながらも、まだ強さ、元気さをアピールする父親たちとの旅行は、やはり疲れるものだった。