一人旅おやじがゆく

旅することが人生の最大の喜びである旅好きが、各地で見たもの感じたことを淡々と記します。

寅さんの舞台を巡ってきた

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備中高梁。2度舞台になった。


旅好きが割と共通して好きなのが、映画「男はつらいよ」だろう。旅好きだからこの映画が好きなのか、この映画が好きだから旅好きになったのか、2つに分かれるだろうが、私は前者である。何しろ小学生の頃から地図と古い街並みが好きな、変わり種だった。

なので、ほとんどのロケ地はほぼ巡っている。というか、旅を続けているうちに結果的に巡っていたのが、正しい表現だろう。もちろん、旅先ではロケ地であることは意識している。

今はネットフリックスでも全作品観れるので、全48作品を少なくとも3回ずつ観ている。だからなんだと言われたら返す言葉はないが、結構自慢である。分かる人にだけ分かってもらえばいい。

寅さんファンは意外と多い。先日テレビで、立川志らく三船敏郎が出演した寅さん作品を、第38作目とするっと語った。この人も相当観てる、と感心したが、その場で盛り上がることはなかった。ただ娘の三船美佳が驚いていた。俺だって答えられるぞ、と思った。

一番の名作とされているのは、25作目。りりー3部作の完結編とされる沖縄が舞台の作品。しかし私は、第5作目の浦安が舞台の作品が一番好きだ。東京ディズニーランドができる10年以上前に作られた。まだ貧しい漁村の浦安だ。山本周五郎青べか物語の香りが漂っている。北海道の小樽あたりも舞台になった。油まみれの労働を寅さんが愚直に追い求める。もちろん、そのうち嫌になって、やがて恋愛も成就せずに旅に出るという流れ。何回見ても飽きない。うちの2人の娘も感化され、気分が滅入ると寅さんシリーズを観ている。時代にそぐわない女性に育て上げてしまい、ちょっと不憫だ。

寅さんが行商をする街は、どこも似ている。しっとりした小さな町だ。例えば九州なら福岡の秋月、佐賀の呼子、宮崎の飫肥。中国地方なら岡山の高梁、島根の津和野。映画の出来としてはそう大したことはないのだろう。それは子供の頃から理解していた。山田洋次監督ならではの性善説とでもいうか。くさいといえばくさい。だから、寅さんを観ない人は一切観ない。本格的な映画ファンは決して評価しないはずだ。観る必要性を感じないと言い切る人もいた。それはそれでわかる。その人にとっての癒しは全然別の作品が与えてくれるのだろう。

正月映画で寅さんの新作が上映される。どんな形で作られたのか気になる。ぜひ観たい。新たなるロケ地が登場すれば、なお嬉しい。そしたら必ずその地を訪ねる楽しみができる。