一人旅おやじがゆく

旅することが人生の最大の喜びである旅好きが、各地で見たもの感じたことを淡々と記します。

私のソウルフードはサッポロ一番みそラーメン

それを食べたら気分が安定する、落ち着く、自分らしさを取り戻す、という食べ物が誰にもあるのだろう。いわゆるソウルフード。ちなみに私は、サッポロ一番みそラーメンだ。私の安上がりの舌はこのあたりから来ているのかもしれない。

私は子供の頃、食べ物の好き嫌いが激しく、親も手を焼いていた。そしてお出掛けや遠出が好きな割には必ず車酔いするという、困ったおぼっちゃんだった。

その頃母はほぼ毎週末、自宅から10キロほど離れた実家に遊びに行っていたが、あまり友達が多い方ではなかった私も必ず同行し、そして必ず車酔いしていた。青白い顔で母の実家に到着すると、親戚のおばさんがサッポロ一番みそラーメンを作ってくれた。すると不思議なことに車酔いの不快な気分が収まったものだった。

以来、この即席麺は常に私のそばにある。困ったおぼっちゃんは、案の定、ひ弱な大人になった。この50年間、ともすると腰砕けになりがちな私の人生をサッポロ一番みそラーメンは静かに支え続けてくれた。ありがたい。ちょっと大げさだが、正直な気持ちだ。

ある時、同僚にこの話をしたら、大いに興味を示し、共感した上で、「ただ自分の場合違うのは、みそラーメンではなく、サッポロ一番塩ラーメンだということ」と強調していた。私には塩ラーメンを食べる習慣がないので、その夜、早速購入して食べてみた。しかし、みそラーメンには遠く及ばない。もちろんうまいのはうまい。今でも時折買ってはいる。

じゃあ、ほかの即席みそラーメンはどうなのか。21世紀に入った頃から高級即席麺が次々と登場。まさにスーパーのラーメン売り場は百花繚乱という様相になった。で、色々と試した。300円を超えるような豪華版まで出たが、やはりサッポロ一番みそラーメンには敵わない。あの独特のざらついたスープ。いい感じの縮れ麺。私は必ず生卵を一個入れる。麺を半分近く食べ終えた段階で、生卵をずるっとすする。オレ流だ。

では、ラーメン屋のみそラーメンはどうか。残念ながら熊本ではみそラーメンを出す店は少ない。もっぱらトンコツ。そんな中でも、私がようやく見つけ出した店が小国町にある。福一ラーメン小国店。名前からするとチェーン店なのだろうか。飾り過ぎず、凝り過ぎず、普通に作っている感じ。すごく美味しいというわけではない。でも私としては、サッポロ一番みそラーメンに近い感じがするのだ。高齢のご夫婦が経営されている。ざっと見た感じ、ドライブやツーリング途中のおじさんたちが多く立ち寄っている。もちろん、地元の人々も多そうだ。

子供の頃に好きになった味は、いくつになっても嫌いになることはないようだ。おそらく70、80になっても、私はサッポロ一番みそラーメンを食べ続けていることだろう。「うちのじいちゃんと来たら」「高度成長期に育った人は即席麺に毒されているな」などと陰口をたたかれても、食べ続けたい。