一人旅おやじがゆく

旅することが人生の最大の喜びである旅好きが、各地で見たもの感じたことを淡々と記します。

宮本浩次の「ロマンス」好調

ソロ活動をしているエレファントカシマシ宮本浩次が、最近盛んにメディアに露出している。ニューアルバム「ロマンス」の売れ行きが順調だからだろう。
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私も10日ほど前に購入した。岩崎宏美の「ロマンス」、太田裕美の「木綿のハンカチーフ」、ちあきなおみの「喝采」など70年代を中心に女性歌手の名曲を激しく、しかし情緒豊かに歌い上げる。それも原曲通りと思われるキーで。

ホント、感動します。

夕暮れ迫る街並みを見ながら車の中で聞いた。恥ずかしながら涙がとめどなく出た。心が浄化されるようだった。

特に「木綿のハンカチーフ」は大好きな曲。小学6年生の時に流行った。宮本と一緒に歌ってみるのだが、4番の「恋人よ、君を忘れて、変わってく僕を許して」というフレーズになると胸にググッと来て、歌えなくなってしまう。

「ジョニーへの伝言」も最高だ。あの頃の名曲に出てくる女性は踊り子や歌手が多い。寅さんで言うところのリリーである。「今度のバスで行く。西へも東へも」という歌詞がいい。旅情を誘う。「ジョニーが来たなら伝えてよ。私は大丈夫」「根っから陽気にできてるの」といったセリフ、現実にはあまり使いそうにない。リリー好みの言い回しである。どこか無国籍な雰囲気。アメリカへの憧れなのだろうか。海外に行くことなどほとんどできなかった時代である。

宮本のこのアルバムのラインナップは、私が70年代に好んで口ずさんでいた曲ばかりである。80年代なら「赤いスィートピー」。カラオケが普及し始めた頃なので、よく歌っていた。

思えば70年代の歌謡曲というのは、ほかのどの時代にもない深さがある。阿久悠筒美京平松本隆らの才能、今になって思い知らされる感じだ。

朝ドラ「エール」を見ていて改めて感じたが、古関裕而の時代はやはりメロディーも詩もストレートで変化に乏しかった。それが60年代終盤から歌謡曲の世界がググッと変わってくる。アレンジのレベルアップあたりも影響したのか。堺正章の「さらば恋人」のイントロを聞くだけで心は一気に持っていかれる。

謡曲のピークは70年代前半なのではないか。もちろん個人的な感覚なのだが。

70年代も後半になるとニューミュージックと呼ばれる分野が現れ、ユーミンとかサザンオールスターなどが出て一気に歌の世界の照度が上がる。なにか明るさが増したのだ。良くも悪くも。そしてシンガーソングライターの存在が当たり前となる。

私が大学生だった80年代でさえ「70年代っぽい」という言い回しが早くも存在して、冷やかしたり冷やかされたりする時に使っていた。それくらい70年代は「濃い時代」だった。ちなみにこの「70年代っぽい」という言葉は20世紀の間はしばしば使われたが、さすがに最近ではあまり聞かなくなった気がする。

90年代以降、楽曲の作りは高度化したと思う。コード進行一つとっても以前とは全然違う。もちろん素晴らしい曲はたくさんあるが、時々、70年代の「バランスのちょうど良さ」が懐かしくなる。

宮本のアルバム「ロマンス」を聞いて涙したのは、そのあたりが大きいのかもしれない。

27日朝のNHKあさイチ」に宮本が出演。華丸大吉とたっぷりトークを展開したうえ、「ロマンス」など3曲も披露した。朝からあれだけ熱唱できたところを見ると、一睡もせず本番に臨んだのかもしれない。ちなみにこのブログに掲載した写真はテレビ画面を撮った。

宮本はそういうところ生真面目そうなので十分にあり得る。

視聴者からのメール紹介で、「アルバム聴いて、翌朝目が腫れるくらい泣きました」というのがあった。自分と同じ感覚の人がいるんだなと嬉しかった。